☆8/28(水)

西明石→明石→神戸→六甲山(泊)

 

 雨。「この日起きたら世界が変わっていた」――そんな感じの朝でした。
 寝起きの鈍いアタマに、1つずつ、晴れの日との違いが浮かんできます。電気自動車にとって、雨の日の走行はあまり嬉しいことではないのです。

 まずワイパーで電気を食います。窓開けて走るワケにも行かないので、今までずっとケチってたエアコンも(暑くなくたって、ガラスの曇りを取るために)、動かさなければなりません。
 リヤウインドウの熱線なんか使ったら、更に電力消費量大幅アップ。増して安全のためにスモールライト(当然、テールランプと後ろのナンバープレートの照明も連動)まで点灯したりしたら・・・・・・。
 また、路面の走行抵抗も大きくなりますし、晴れ・曇りの日に比べて余分に電気を消費してしまう要因が重なるのです。

 もっとも、この日は神戸まで行ければOK。距離的には大したことはなく、予定通り、明石市立天文科学館に向かうことにしました。東経135度線の真上に建つ科学館です。

 雨に濡れながら駐車場に行き、折り畳み傘をコンビニの手提げポリ袋に入れて発車。
 昨今はこの袋を少しでも減らそうという運動が盛んですが、丸っきりなくなっても困るのです。まあ、無駄にせず有効利用することが大切ということで。

 出口で駐車料金(\100で済みました)を支払う時、係員のオネエサンが「電気自動車?」と興味津々な表情でしたので「日産ハイパーミニって言います。市販車です!!」と、殊更に「市販」を強調して返事しました。
 昨年、徳島自動車道を走った時も、料金所で「試運転ですか?」なんて言われたのですが、価格や価値観の問題はともかくとして(補助金を満額もらっても「プリメーラの値段で僅か33馬力・定員たった2名の軽自動車」なのは事実)、買おうと思えば誰でも手にできること、これが重要なんだと心底思います。

 所々渋滞に捕まりつつ、シングルアームのワイパーをこまめに動かしたり切ったりしながら、明石市立天文科学館に到着。中央には、SEIKOマークの入った時計台の塔があり、まさに時差ゼロのこの場所で、刻々と時を刻み続けていました。
 館内は時計や時間関連の展示もさることながら、メインは宇宙についてといった感じ。ちょうど「月を離れて30年」と銘打って、アポロ計画の特別展示も開催されていました。

 歴代の乗組員や、月への母船・着陸船の名前、月面車も含む貴重な写真の数々に釘づけになり、昨夜の続きじゃありませんが、すっかり心は宇宙へと飛び立っていました。
 そうそう、月面車も電気自動車でしたね。ハイパーミニも、空気の入ったタイヤを外して真空でもOKなものに履き替えれば、月面でも走れるでしょうか?(エアコンの代替フロン冷媒や水冷モーターの冷却液等、液体関係の沸騰や凍結等への対策は要るとして……)

 展示を大体見て、次はプラネタリウムへ。上映時間約1時間……見ないで明石駅前へ出て、タコ料理の昼食でも摂って他を観光するか一瞬迷いましたが、せっかくですし、外は相変わらず雨ですし、じっくり腰を据えて観ていくことに決めました。

 しかし、小学校に上がったばかりの頃、父に連れて行ってもらった東京・渋谷の五島プラネタリウム以来20ウン年振り!!
 当時は日本で1つしかなく、物凄い長蛇の列だったのを覚えていますが、今や21世紀。ここのプラネタリウムは空席も結構あって、和やかな雰囲気。ほんと、隔世の感があります。

 途中、北斗七星と南斗六星(聞き慣れない名前ですが、現在でも南の夜空に見えるそうです)にまつわる中国の伝説などを織り交ぜ、しばしの間、星空の観覧を楽しんだ後は、展望台に上ってみました。
 (この天気だと、さっきシミュレートしてくれた「今夜見える星座」の案内も役に立ちそうにないか……)
 雨に霞む明石海峡大橋をちょっと恨めしく眺めてから足元を見ると、豆粒の様な自分のハイパーミニも見えました。
 海側を見ると、JRの山陽本線や山陽電鉄の電車も頻繁に行き交っています。

 結局、駐車券の時間ギリギリの2時間を過ごし、やっとハイパーミニに戻って発車しました(この時間を充電に使えてたら……なんて思うと、どうしてももったいない気が……)。

 駐車場の守衛さんも、ちょっと珍しそうにこちらを見ていましたが、今年4月に残念ながら自己破産したレンタカー会社・神戸エコカー((株)神戸エコカーパスカル研究所)(参照1)(参照2)が健在だった頃は、同社でレンタルしていたトヨタの電気自動車・RAV4L V EV(ラブフォー エル ファイブ イーブイ)に乗ってここを訪れた人も少なからずいたのでは?
 さて、国道2号線を東進すると、以前、その神戸エコカーのRAV4借りて来たことのある舞子の辺りで、かなりの渋滞になりました。
 せめて音楽でも、と行きたいとこですが、電気をケチるため我慢・・・・・・じゃなくて、今回は何とか行けそうに思えたので、CDを掛けました。
 これでも、標準装備のオーディオ(ラジオのみ)を外して、市販の1DINサイズのCD/MD/ラジオ全てOKなヤツに換えてあるのです。

 前日の所で書いた「スター・トレック」のサントラ盤は持って来てませんでした が、プレイヤーには映画「スター・ファイター(THE LAST STARFIGHTER)」のサントラ盤(メーカー:INTRADA/輸入盤)が挿入済み。
 クレイグ・セイファン作曲の、壮大でドラマティックなオーケストラ曲のアルバムです。

 映画の方は、アメリカの片田舎でトレーラーハウスに住む、貧しいけれどテレビゲームの大得意な少年が、ある日「ゲーム大会」と称して、実はホンモノの宇宙戦争真っ只中の戦闘機パイロットとして、異星人にスカウトされてしまうという内容。

 宇宙船等の特撮は、史上初・模型ではなく全てCGで描かれ、最後の必殺攻撃もどこかゲーム的でしたが、その音楽は機械的なシンセサイザー中心ではなく「血の通ったフルオーケストラ+シンセの飾り付け」だったのです(メイン・タイトル曲のイントロ部分は、日産自動車提供の「出没!アド街ック天国」の中でも毎週の様に使われていましたので、皆さんも1度はお聞きになったことがあると思います……あれはオリジナル・サウンドトラックの演奏ではなくてカバー盤みたいですが)。

 あ、映画自体も、映像の斬新さだけではなく、それなりに血の通ったドラマがあって、観終わった後、どこか温かい気持ちになれる、後味のよい作品です。衝撃の感動作とかいうのではありませんが、オススメ(但し、VHSソフトはありますがDVDは未発売)。

 他にCDを9枚持参したのに、結局、この旅行ではその1枚しか聴かずに終わってしまったのですが、それだけ何度も聴きたくなったのでした。
 例えば出発の時や、長い走行を終えて目的地に到着する時など、助手席の話し相手がいなくとも、その場面場面を素晴らしく盛り上げてくれたからです。

 中には「電気自動車にオーディオは邪道だ」みたいなことを言う人もいますが、それは違うと断言します。
 こうやって、ビートの効いたポップス以外の曲だって(木管楽器の繊細なソロの部分なんか特に)、エンジン音の妨げなしにジックリ聴ける利点もありますし(但し、60km/hも超えると、通勤電車の動力車の中みたいな大きなモーター音に掻き消されてダメですが……)、またハイパーミニ独特(?)の使い方として、充電中にキーをACCにすると、電装品関連は充電器からの外部電源で直接作動する様なので、自宅ほか充電器の設置場所では、リスニング・ルームとして長時間過ごすこともできるのです。もちろん、その間、排気ガスは出ません。

 ただ、キーがACCだとエアコンが掛けられないのが難点ですが……(充電ケーブルを外して、キーを奥まで回して、クルマ自体を起動させてからエアコンをONにするか、或いはキーを完全に抜いた状態で、リモコンのスイッチからエアコンを外部電源で作動させることは可能なのですが)。

 さて、渋滞の中、舞子から神戸に近づく間に、心持ちですが、雨も小降りになってきました。この区間、せっかくの海岸沿いドライブも、海の色はドス黒くて台無しだったのが残念!!

 次の普通充電エコ・ステーション「HAT(ハット)神戸給油所」のある神戸東部新都心(HAT神戸)は、阪神淡路大震災後、神戸製鋼跡地の再開発で急速に新しい施設が増えている所で、道路の区画も、カーナビの今年度版の電子地図(パナソニック用/昭文社の)に正確に載っていません(詳細縮尺では何とか出ているものの、広域図では道1本記載ナシ)。
 エコステの位置は、事前に調べて、ほぼ正確に電子地図上にプロットしましたが、コース案内もHAT神戸の北側でおしまいです。

 片側4車線ぐらいある道路を、右折のタイミングを逃すまいと注意して走っていると、左車線から1台の日産ADバンが、強引に前に割り込んできました。
 よく見ると、私のクルマと同じく、CEV(セブ)マークのステッカーが車体背面に貼ってあって、同じく少し下には「天然ガス自動車」と書かれているではありませんか。
 こんのヤロ〜〜〜!! CEVでそんな運転するんじゃないっ!!(全く、社用ドライバーだからか、何の自覚もなさそうでした……仕方ないか)

 三宮界隈や、JR貨物の神戸港駅 (地図)を過ぎて、ナビの示す右折ポイントに差し掛かると、曲がれる道なんかなくて、そのまま直進するハメになりました。でも、焦っちゃイケナイ……。
 「神戸東部新都心」って言うぐらいだから、何らかの案内板ぐらいあるだろうと思ったら、少し先にありました。青い案内標識に「HAT神戸」と。

 右折して阪神高速3号神戸線のガードをくぐり、地図にない直線の広い道路を南方向へ直進。突き当たりの海岸の手前まで行って更に右折して、海側から回り込む様にして、ようやくHAT神戸給油所に到着です。

 施設全体は「プリテールHAT神戸給油所」・・・・・・関西アポロ(株)の経営する出光のセルフ式ガソリンスタンドで、敷地の東の壁際、歩道に寄った方に“EV STATION”と赤い字で大きく書かれた充電スタンドが設置してありました。
 見ると、ここのは日本電池のじゃなくて、お台場EVステーションのと同じ (株)三英社製作所の「ロボ・チャージャー」(下の方参照)。何か、すごく安心した様な気が……(こらこら)。

 充電器の前に駐車すると、間もなくワイシャツ・ネクタイ姿の男性の係員が駆け寄ってきてくれて、充電開始時の積算電力量計のチェックなど、手続きをしてくれました。

 ナゼか充電器の真上だけに小さい屋根があり、クルマも私も小雨に濡れながらでしたが、昔の旅人が、長らく乗ってきた愛馬を繋ぐかの様に(?)、充電スタンドから愛車の前頭部に充電ケーブルを渡すと、宿場ならぬ休憩可能な建物の中へと歩いて行きました。

 ところで、現在ある全国の普通充電エコステの中で、ここだけがガソリンスタンド内への設置でした。
 かつて数十箇所設置された急速充電エコ・ステーション(下半分参照・・・・・・30分で約60〜70%の電気を急速充電する所で、ハイパーミニは非対応)と違い、普通充電だと時間が掛かります。
 当然、充電中に、ドライバーが近くで何かできる場所が望ましいわけなのですが、果たしてガソリンスタンドってどうなのか・・・・・・?

 しかし、ここには1つの答えがありました。
 セルフ式のスタンドの建物部分には、カジュアルなイタリアンレストランのチェーン店「プロント」が入っており、ゆっくり食事するもよし、また食事に限らず、売店として店内に豊富に用意されている飲み物や菓子類だけ買って、同じ店内のテーブル席で休むこともできるのです。禁煙席有り、トイレも綺麗(男性用は1人しか入れない個室でしたが)。
 レジでは、ガソリンや飲み物・菓子類の会計も、プロントの名札をつけた制服の女性ほかが受け持っていました。

 また、すぐ斜向かいにヤマダ電機もありますし、同じHAT神戸内には兵庫県立美術館などもあります。

 で、私の様な、神戸中心部への観光旅行客はどうなのかと言うと・・・・・・

「すみません、ここの最寄り駅は阪神の岩屋ですか?」
「いえ、春日野道(かすがのみち)駅の方が近いと思います。前の通りを左に行って頂いて・・・・・・」

 なるほど、鉄道の駅にも近いんだ。これなら充電中のお出掛けも容易です。

「ありがとうございます。それじゃ、しばらく三宮の方まで行ってきますので・・・・・・」

親切な女性の店員さんに断って外へ出ると、嬉しいことに雨は止んでいました。
 教えてもらった通り、ちょっと先の陸橋の所から北へ進むと、陸橋から続く歩道はそのまま地下へと潜り、更に歩くと阪神電鉄の春日野道駅(地下駅です)の入口がありました。

 券売機に、10年前に購入して少しだけ残額の残ってたハープカード(阪神電鉄の券売機専用プリペイドカード……現在売られているのは、他社線含めた自動改札にそのまま通せる「らくやんカード」に代わっています)を恐る恐る挿入してみると、磁気情報はまだ無事で、ちゃんと購入できました(この後、復路で完全に使い切りました)。

 ちょっと怖いぐらいにホーム幅の狭い春日野道駅から三宮駅に出て、地上に上がると、久し振りに見る駅前の風景が目に飛び込んできました。
 しかし、震災で損傷して取り壊された阪急百貨店のビルがなく、低層階の駅舎だけが残されて復興した情景……もう何年も経ったのに、どうしてもヘンな気分です。

 神戸も何度か訪れたことがありますので、せっかくだからまだ観てない所をと、一大中華街である南京町へと足を向けました。
 三宮のアーケード街へ入る手前、震災の復興対策本部だかのビルが取り壊し作業に入っている光景を目にしました。既に役目を終えたのですね。

 大丸の前を過ぎ、

(こりゃもう1駅、元町まで乗って来りゃよかったかな?……いや、三宮のアーケード街歩きもあってこその神戸観光だ)

などとアレコレ考えつつ、何とか南京町に辿り着き、15時過ぎの遅いブランチ(またも朝食べてなかった)&店頭の点心の食べ歩きを楽しみました。
 ひと通りタテヨコに歩くだけでもうオナカいっぱいです。恐るべし!!南京町(笑)。

 「臥龍殿」と書かれた立派な建物の正体が市立の公衆便所だったりして、更に意表を突かれた後は、近くの神戸華僑歴史博物館を見ようと栄町通の南側へ。
 しかし、ガイドブック(昭文社の「まっぷるマガジン」)の地図に示された所をいくら歩き回っても、それらしき建物がありません。

 近くにいた電気工事会社(?)の方々に尋ねてみると、親切に自前の地図帳を出してきて見てくれましたが、

「まさにココですね・・・・・・」

 そう、その地図にもガイドブックと同じ地点――まさにその時立っていた場所の真向かいに「神戸華僑歴史博物館」と書かれていたのです。
 しかし、目の前にはまるで名前も違うオフィスビルが建っているだけ。
 イヤ〜〜〜な予感がしましたが、わざわざ出してきて頂いたその地図帳も、同じ昭文社のものでした。カーナビの電子地図に続いて、2度もハメられるなんて……!!
(絶句)

 結局、後から表に出てきた、年輩の上役らしい方がある程度の場所をご存知でしたので、教えて頂いた方向に歩いて行って、無事に博物館の入っているビルを発見できました。しかし、まだまだ甘かった・・・・・・。
 ビル2Fの博物館に上がると、何だ何だ?!床に並べられたいっぱいの荷物・・・・・・
まるで棚卸し状態……?!

 フロアにいた、職員らしい年輩の男性が、私に気がついてこちらに歩いてきたので尋ねると、

「ここは中国本国にも置いてない様な貴重な展示品もあるんですよ。しかし、11月頃まで改装工事中でして・・・・・・」

あららら……(呆然)。う〜〜〜ん、また来るっ!!(って、次の機会はいつになるのやら???)

 仕方ないので、気を取り直して、そこからだともうスグ近くのポートタワーへと向かいました。
 何だかもう疲れてきて、歩くのもゆっくりに……。元来、自動車旅行なのに、こうも歩き疲れるなんて妙な話ですが、これも電気自動車の旅独特の経験ってとこでしょうか?

 「やっぱり不便だ」と言ってしまえばミもフタもないのですが、充電待ちの間に、こうしてあちこち観て歩くのは、長い待ち時間が付き物の、鉄道の鈍行乗り継ぎ旅行に通ずる感覚がある様にも思えます。
 そのテの旅だって、わざわざ好き好んで出掛けて行くわけですからね。それも、日常はそんなことせずに暮らしていて、あくまでこういう旅先だけの、非日常の世界の中での待ち時間なのであって・・・・・・。

 さて、タワーの上から、ちょっと変わったデザインの小型客船「パルデメール」も見え、六甲アイランドから明石方面までグルリと景色を眺め回していると、タワーの足元に超電導電磁推進実験船「ヤマト1(いち)」の姿が目に止まりました。
 北側、ナゼか山肌に見つけられなかった錨のマークに(もうなくなったのかな?)と首を捻りながらタワーを降りて、タワーの足元周囲のメリケンパークへ。

 「ヤマト1」は実物でしたが、いくら錆びないアルミニウムの船体とは言え、もう何年も雨ざらしの屋外展示が祟ってか、所々ペンキにヒビが入っていました。
 船体の周りは手摺りで囲まれ、展示場所自体は綺麗に整備されていましたが、屋根ぐらい付けられないものでしょうか?
 これも貴重な産業文化財。しかもフレミングの左手の法則で動く「海のEV」なんですから(あ、発電用のエンジン積んでるからハイブリッドですか)。

 もう1隻、「ヤマト1」と同じ頃に、新方式のハイテク貨物船として話題になった「テクノスーパーライナー」の水中翼タイプ実験船「疾風(はやて)」の屋外展示もありましたが、こちらも雨ざらし。
 「サイボーグ009」のドルフィン号の様な格好イイ船首を持つ船ですが、こちらも傷まない内に大事にして欲しいものです。

 「テクノスーパーライナー」(TSL)の方は、もっと大型の「飛翔」(船体中央下部が空洞になっていて、そこに圧縮空気を送り込んで、船体をある程度水面から持ち上げて水の抵抗を減らすタイプの実験船)も造られ、後に静岡県が買い取って防災船として改装、今は「希望」の名で土日など清水〜下田を結ぶ超高速カーフェリーとしても使用されています。
 しかし、なにぶん「疾風」と同じくガスタービンエンジンなので燃費が悪く、バブル崩壊後は全く見向きもされず、本格的な実用船の量産には至らなかったとのこと。残念なお話・・・・・・。

 ハイパーミニは現状、東京方面から南伊豆までの自走は無理ですが、TSL「希望」のお陰で、清水回りルートなら行けるかも知れません。
 「箱根越え」さえ何とかなったら、いちどは試してみたいものです。
 ……と、こうやって、船や鉄道など他の交通機関との組み合わせで物事を考える様になるのも、電気自動車ならではでしょう(特にハイパーミニの様な超小型コミュータータイプの車だと……)。

 メリケンパークの南側の岸壁沿いを歩くと、完全に人工的なコンクリートなのに、小さなカニがうろちょろしていて意外でした。
 で、先程から、パーク内に設けられたステージから歌声が響いていたので近寄ると、どこかの大学の催しで、学生のコンサートをやっていた様です。
 よく通る声の女の子が結構いい歌を歌っていましたが、辺りも薄暗くなってきましたのでそろそろ出発。阪神の元町駅に向けて歩き出しました。

 HAT神戸給油所に戻ったのは18:30。充電を始めてからちょうど4時間後のことでした。
 ハイパーミニは、カタログによればバッテリー残量ゼロからフルチャージまでの充電時間は約4時間とのことですが、実際には、見掛け上、バッテリー残量計の目盛がゼロの状態から始めてももっと早く済みますし、また、到着時にバッテリー残量はまだ20%ありましたので、既に充電完了のハズ……。
 近寄って充電器のインジケーター部分を見ると、確かに「充電中」を示す白いランプは既に消灯していました。

 しかし、以前気がついたのですが、いちど充電が完了しても、充電ケーブルを繋ぎ直したり、外部電源でエアコンを一旦作動させたりすると(そのあとエアコンOFFにしても)、また充電が開始され、引き続き、しばらく電気が入る様なのです。

 こういうダメ押し充電がバッテリーを傷めないかも気になるところ。
 でもハイパーミニの場合、あまりに過充電すると爆発するというリチウムイオン電池搭載のせいか、かなり過保護に制御されていて、本来の許容量の2/3ぐらい入ったら充電を止めてしまうという話を聞いたことがあります。
 ですから、そんなには負担にならないと思い、2−3度ダメ押し充電を繰り返して、更にリモコンでエアコンを外部電源作動させて、室内をある程度涼しくした後に係員を呼びました。

 残り2割のバッテリー残量からフルチャージまで8割分の電力量は1.4kWh。後からダメ押し充電してエアコン動かした分は、全くメーターの数字を増やしませんでした。
 で、レジへ行って会計してもらうと、これがたったの42円!!

 8割の電気があれば、夏場なら、流れのよい一般道でエアコンOFFにすれば、65km程度は走れます。カタログに書いてあった「深夜電力契約なら、1km走ってたったの1円」よりも安いではありませんか!!
 もっとも、お台場含めて、今回利用した普通充電エコステの内、電気代を徴収したのはこのHAT神戸給油所だけで、他の所は全て電気代無料サービスだったのですが・・・・・・。

 考えてみると、今回、総走行距離747.6kmを走るのに電気代として支払ったのは、自宅で出発前に入れておいた分を除くと、この日と翌日にHAT神戸給油所で入れた分、合計72円のみ(ちなみにHAT神戸給油所での電気料金体系は、1kWh当たり30円)。
 同じ距離をガソリン車で走ったら、給油代はいくらかかったことやら?……こんな風に、エネルギー補給が安上がりなのは、間違いなく電気自動車の大きなメリットの1つでしょう。

 但し、お台場EVステーションでは最初の2時間\600、あと30分毎に\150の駐車料金が掛かってしまったので、その分は結構高くつきました。
 ダイナシティウエストエコ・ステーション(小田原市)や元町EVステーション(横浜市)と同じく、駐車も充電も完全に無料の「エコクリーンひょうごグループ」の皆様の普通充電エコステには、改めて非常に有難みを感じた次第です。

 さて、いよいよ六甲山ホテルへ向けて出発。距離にして13kmちょっとの道のりです。
 平地ならもちろん楽勝なのですが、さて、登山道ではどれぐらい電気食うものなのか・・・・・・?
 そうは言っても、走行中、ラジオを点けてみました。せっかくですから地元・神戸 のKiss-FM・・・・・・アレ?全然入んないじゃないの(苦笑)。

 東へ進み、ナビの案内通りに阪急の線路際に出ると、こちらの進行方向と逆向きの一方通行路に当たり、脱出するのにちょっとばかし手間と電気を食いました。
 確か、前回、神戸エコカーのRAV4L V EV借りて来た時も、積まれていたパナソニックのDVDカーナビに案内されて、同じ地点でハマッたんだっけ?・・・・・・そんな記憶がふつふつと甦ってきました。
 RAV4に付いてたナビより何年も後のモデル(しかも地図ディスクは今年版)なのに、全然進歩してないじゃないか〜〜〜!!(怒)
 いっそのこと、一方通行の標識の矢印の方を、逆向きに書き換えてやりたくなりましたが、何とか突破して、段々と急になってゆく坂道を進みます。

 住宅街を抜け、ケーブルカーの六甲ケーブル下駅を過ぎると、勾配は更にキツくなります。
 かと言って、2車線の幹線道路ですからスピード落とすわけにも行かず、そのままパワフルに走行。

 一応、ハイウェイカードとETC車載器もスタンバイしておきましたが、ナビの案内通り走ってたら、表六甲ドライブウェイの料金所を左に見て直進してしまい、急に照明も殆どない旧道(?)に突き進んでしまいました。
 後続車は全て料金所の方に曲がってしまったみたいです。独りぼっち……ま、いいか。それならスピード落として、と。
 かなりの急カーブを抜け、やがて新道(?)と合流して料金所を通りましたが、無人で機械もナシ。
 結局、表六甲ドライブウェイ終点の丁字ヶ辻に至るまで、通行料金取られずに済んでしまいました。

 合流後も、しばらくは後続車ナシ。30km/h級にスピードダウン(・・・・・・と言っても、制限速度30km/hでしたが)。しかしそんな状況も長くは続かず、やがて後続車2台のヘッドライトが急速に接近してきました。
 (仕方ないか…)とアクセルをグイと踏んでスラストを掛けたところ、間もなく前方からテールライトが……。

 日産のラルゴだったでしょうか?大きな白い1BOX車に、アッと言う間に追いついてしまったのでした。
 見ると、背面には若葉マーク。山道に不慣れなのか、どうにも自信なさそうにノロノロ走っています。どうやら、ドライバーは女の子かな・・・・・・?

 まあいいさ、こっちも鈍足の方が好都合だもんね。かなり電気の減りも激しいし・・・・・・・・。
 再び減速して、アオられたと思われない様に、少し距離を保ってゆっくりついて行きました(焦って加速されると、こっちも加速しなきゃならないので都合が悪い)。

 しかし……そのラルゴ、しばらく走った後に、遂にヘナヘナと立ち往生してしまったのです。おいおい……止まるんなら、ウインカーかハザードでも点けてくれってば。それとも、それすら考える余裕がないワケ?
 そう思ってるワキを、先程からの2台の後続車が、何の合図も出さずに傲然と抜き去って行きました。こ〜い〜つ〜ら〜〜〜!!そのまま谷底に落ちろってんだ!!

 結局そこで抜くことはせず、再び発車した若葉マークラルゴに付いて、「低速組」のまま、文字通り丁字路の交差点になっている丁字ヶ辻に到達して右折。
 いいじゃない、焦るんじゃないよ。同じペースでついてくから・・・・・・。
 しかしまたスグに、前のラルゴはヘナヘナと止まってしまいました。いかにも先に行って欲しいと言わんばかりですが、ハザードか何か点けないとワカンナイっての。ハッキリ意志表示してくれよぉ……ええい!!仕方ない……遂にしびれを切らして、右ウインカー出して追い越しました。

 でも、追い越したとこで、ペースアップはせずに低速前進。そしたら後ろにラルゴもついてきました。
 こちらの車体背面の「でんき自動車」のロゴステッカー見て、どう思われたんだろう? 低速で付いてきた理由まで察してもらえたでしょうか?
 逆に「電気自動車って非力でスピードの出ない乗り物なんだ」と勘違いされてたらヤだなあ。

 ほどなくして六甲山ホテルが見え、正面玄関を少し行き過ぎてから左折してホテルの駐車場に到着。ここは駐車料金無料でした。嬉しいサービスです。
 壁際の駐車スペースには、排気ガスが建物側に吹き出さない様にとの趣旨で「前進駐車のお願い」が貼ってありましたが、これは電気自動車なので関係ありません。堂々とバックで駐車しました。

 しかし、13.5kmほど走っただけで、何と50%の電気を使ってしまいました(大汗)。それもそのはず、後で正面玄関前に立っているプレートを見たら「現在地点の標高 768m.78」ですって。
 クルマに充電したHAT神戸は海岸のそば、殆ど海抜0mみたいなものでしたから、僅か13.5km進む間に、純粋にそれだけの高さを登ってきたことになります。そりゃ電気食うわ……。

 六甲山ホテルへは、実は駐車場だけなら今回が2度めの来場でした。
 前回は、1999年6月20日。神戸エコカーのRAV4L V EVを借りて友達と2人でのドライブでしたが、その日こそが、紛れもなく私が初めて実物の電気自動車と出会った日でした。しかも自分でハンドルを握り、神戸の街と六甲山を走ったのです。
 但し、この六甲山ホテル駐車場でPHSを失くしたことに気付き、慌てて探し回ったという嬉しくないオマケ付き。
 ホテルの並びの交番(無人でした)にあった黒電話から警察署に届け出ましたが、遂に見つからなかったんだっけ。

 ところで、なぜ当時六甲山ホテルの駐車場に寄ったかと言うと、神戸エコカーの用意した充電設備が2基、そこに設置されていたからなのです(右下の写真がまさにそれ)。

 神戸市内の主要観光ポイントや淡路島(ウェスティンホテル淡路隣接の駐車場)など30箇所以上だかに、国や神戸市の補助金も使って設置されていた充電設備も、今は全て閉鎖され、使えずに放置されているとのことで、とにかくもったいない限り。
 物理的には、ブレーカーさえ上げて通電させれば利用可能な状態とのことなのに・・・・・・。

 ハイパーミニを停めた後、そんな思いで駐車場の片隅――かつてRAV4L V EVに充電した所へ行くと、確かに今でもまだ、充電ケーブルとコネクターを収納したボックスが残っていました。
 2つある内の片方は鍵も壊れかけていて、扉を開ければ中が見える状態・・・・・・。

 歯痒い気持ちで覗き込んでいたら、ホテルの男性従業員が「何か……?」と近付いてきました。

「いえ、他の電気自動車で来たものですから・・・・・・。この設備では充電できないんですけどね」

 そして、その晩宿泊する旨を告げると、そのまま親切にフロントまで案内してくれましたが、歩きながら話してみると、やはり神戸エコカーの自己破産は、ホテル側にとっても残念なことの様でした。

 チェックインを済ますと、今回、ネットで格安料金での予約だったにも関わらず、ちゃんと荷物を部屋まで運んでもらえて感激!!さすが老舗のリゾートホテルです。
 旧館内の部屋に行く途中に通り抜けたロビー等は、とてもレトロでよい雰囲気でした。「レトロ調」ではなく本物のクラシックホテルのインテリアは、ひときわ素敵です。

 部屋も狭苦しくはなく、旧館独特の雰囲気を味わえてよかったです。ただ、さすがにネットで格安料金の部屋だったせいか、窓の外には木が生い茂っていて、夜景は全然見えませんでしたが・・・・・・。
 あと、バスタブの中を歩くとギッシギッシ軋んだのはご愛嬌???
 窓を開けると、さすがに山の上だけあって、冷気がどっと入ってきました。これならエアコンも不要です。

 外に食事に行った後、21:15頃、フロントでもらった2割引券を手に新館6Fのホテル直営バー“TOP OF ROKKO”に行くと、フロントでラストオーダー21:30と言っていたのに「21:00で終わりました」……おいおい!!

 しかし、フロントで聞いたことを話すと、バーテンさんはイヤな顔ひとつせずにカクテルを1杯作ってくれました。こういう点で、お客さん第一の対応をしてくれる店ってなかなかないのでちょっと感激。
 しかも、申し訳なさそうに「山の上なので、終わるのが早いんですよ」と一言添えてくれました。

 カウンターから夜景を鑑賞した後は、更にガラス越しではなくナマで見たくなり、徒歩でケーブル山上駅の展望台まで降りてみました。意外と距離があります。

 さすがに雨雲が残っているせいか、空には星1つ見えませんでしたが、代わりに、歌のタイトルじゃないけど「地上の星」・・・・・・100万ドルの夜景を存分に堪能することができました。
 途中、沿道の店に「関西空港見えます」の貼り紙が。意外な所に「時代の変化」があるものですね。

 独り旅なのが残念でしたが、それでも夢の様な一夜を過ごすことができました。
 標高768.78m……自分をここまで連れてきてくれた“青りんご”ハイパー君に感謝!!





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